2026年1月1日
河内物産株式会社
代表取締役 井上 芳子
1.DXに取り組む背景・目的
当社は家庭用品の製造卸・小売・EC販売を行う企業です。近年、受注形態の多様化や取引先の増加により業務が複雑化し、経営者や一部担当者の判断・経験に依存する業務が増えてきました。
このままでは、見落としや判断ミスのリスクが高まるだけでなく、経営者の負担増加や、将来の事業継続・人材育成・事業承継にも影響が出ると考えています。
そこで当社では、IT・デジタル技術を活用し、業務を安定させ、属人化を緩和することを目的としてDXに取り組んでいます。DXは単なる効率化ではなく、会社を長く続けるための経営基盤づくりと位置付けています。
1-2.データ活用による経営の方向性
当社は、受注・在庫・出荷・顧客対応などの業務データを一元的に蓄積・活用することで、経営判断の高度化と事業基盤の変革を目指しています。
具体的には、これまで経営者の経験・記憶に依存していた発注判断・受注処理・問い合わせ対応などの業務を、蓄積された業務データおよびAIを活用した判断支援の仕組みに転換します。これにより、属人化リスクを解消するとともに、データに基づく迅速・正確な意思決定が可能な体制へ変革することを、当社のデジタル経営の方向性と位置付けています。
2.DX推進の基本的な考え方
当社のDXは、人員削減や過度な自動化を目的としたものではありません。担当者が日々行っている判断や確認業務を整理し、「誰が見ても分かる形」にすることで、
- 見落としを防ぐ
- 業務を安定させる
- 将来に引き継げる仕組みを作る
ことを基本方針としています。無理に高度なITを導入するのではなく、自社の業務に合った形で、実際に使い続けられるDXを進めます。
3.DXの具体的な取組内容
当社では、受注処理・発注判断・問い合わせ対応など、これまで経営者が個別に対応していた業務について、社内の業務基盤を活用したデジタル化を進めています。具体的には、
- 過去の判断内容や対応履歴の記録
- 類似ケースをすぐに確認できる仕組み
- 見落としや対応漏れを防ぐチェック
などを行い、経験や勘に頼りすぎない業務運営を実現しています。これにより、担当者の確認作業や対応時間が減り、より重要な経営判断や取引先対応に時間を使えるようになりました。
3-2.データ活用による業務改善の具体的方策
当社では、1-2に示した経営方向性(データ活用による経営判断の高度化と業務変革)を実現するため、業務データを収集・蓄積し、以下のデジタル技術を活用したデータ利活用の取組を進めています。
(1)受注・在庫・出荷データの一元管理と分析による発注判断の高度化
複数のECモール・卸販売チャネルから発生する受注データをシステムに集約し、チャネル別の受注傾向・在庫回転率・出荷遅延の発生状況をデータとして可視化・分析します。この分析結果を発注判断に活用することで、欠品・過剰在庫の削減と、データに基づく意思決定への変革を図ります。
(2)過去の業務対応履歴データを活用したAI判断支援システムの自社開発・運用
受注処理・問い合わせ対応・発注判断において蓄積してきた過去の対応履歴データをもとに、AIアシスタントシステムを自社開発しました。このシステムにより、属人的な経験に依存せず、蓄積データに基づく一貫した判断支援を実現しています。経験・勘に頼っていた業務プロセスを、データ駆動型の運営へと変革します。
(3)業務自動化によるデータ継続収集の仕組み構築
FAX受注のデジタル変換・CSV自動生成・出荷追跡データの自動収集など、継続的にデータが蓄積される仕組みを整備しています。蓄積されたデータは、業務改善の指標算出と次のアクション検討に継続的に活用します。
3-3.ITシステム環境の整備に向けた方策
当社では、3-2に示したデータ活用戦略を推進するためのITシステム環境を、以下の方針で整備します。
(1)データ収集・処理のためのクラウド基盤整備
受注・在庫データ分析およびAI判断支援を実現するため、OCR処理・音声認識・クラウドデータベースなどのクラウドサービスを組み合わせたデータ収集・処理基盤を整備します。特定の端末や担当者に依存しない運用体制を確立します。
(2)汎用ツールと自社開発システムの連携による柔軟な業務基盤構築
業務自動化によるデータ継続収集を支えるため、表計算ソフト・メール・スクリプト実行環境などの汎用ツールと自社開発システムを連携させます。低コストかつ柔軟に拡張・変更できる業務環境を維持し、特定のITベンダーへの依存を排除します。
(3)セキュアなデータ通信環境の整備
業務データの安全な送受信を確保するため、本社・倉庫間をVPN接続で結合しています。今後も、データ活用戦略の推進に必要なITインフラを継続的に整備していきます。
4.DX推進体制
DXの推進は、代表取締役(実務執行総括責任者)が主体となって行っています。
- DXの方針決定・意思決定:代表取締役 井上 芳子
- 取組の実行・改善:代表取締役および関係担当者
- 外部任せにせず、自社業務に合わせた運用を基本
当社は取締役会設置会社ではないため、代表取締役が取締役会に準ずる意思決定機関として、DX戦略の方針決定および承認を行っています。中小企業であるからこそ、現場の実情を踏まえたDXを進めています。
4-2.DX推進体制(補足)
DX戦略推進・強化のための体制として、代表取締役(実務執行総括責任者)が全社的なデータの一元管理、DX戦略における各施策の進捗管理等を統括しています。
人材育成については、自社開発システムの操作・運用方法を担当者間で共有するとともに、業務手順のドキュメント化による引き継ぎ可能な体制の構築を進めています。また、デジタルツールの活用スキルを日常業務を通じて継続的に習得・向上させる取組を進めています。
5.人材育成・今後の取組
DXを通じて、業務のやり方や判断基準を社内で共有し、特定の人に業務が集中しない体制づくりを進めています。今後も、
- 業務の見直し
- デジタルを活用した改善
- 社内での使い方の工夫
を継続し、無理のない形でDXを進めていきます。
5-2.DX戦略の達成度を測る指標
当社では、3-2に示したDX戦略(データ活用による業務改善)の達成度を測るため、以下の指標を設定し、四半期ごとに確認・評価を行います。
■ DX戦略の達成度を直接測る指標
- チャネル別データ分析に基づく発注精度の向上率(欠品・過剰在庫の削減件数)
─ 受注・在庫データの一元管理と分析による発注判断高度化の達成度 - AI判断支援システムの活用による受注処理の手作業削減率(目標:主要業務の手作業比率50%以下)
─ 過去データを活用したAI判断支援システムの達成度 - 業務データの月次蓄積量の推移
─ 業務自動化によるデータ継続収集の達成度
■ DX戦略の効果を評価する指標
- 業務ミス・修正対応の発生件数(前年比30%削減を目標)
- 受注から出荷指示までのリードタイム
- データに基づく判断件数(経験・勘に依存しない判断への転換率)
■ DX戦略達成に向けたロードマップ
- 2026年前半:受注・在庫データの一元管理基盤の完成、AI判断支援システムの運用安定化
- 2026年後半:データ分析による発注精度向上の効果測定、手作業比率50%以下の達成確認
- 2027年:データ蓄積量の拡大とAI判断精度の向上、業務ミス30%削減目標の達成確認
これらの指標をもとに、データ活用を含むDX施策の有効性を継続的に確認し、必要に応じて戦略・施策の見直しを行います。
6.情報セキュリティへの取組
情報セキュリティについては、IPAが推進する「SECURITY ACTION(二つ星)」に基づき、経営者主導で基本的なセキュリティ対策を実施しています。今後も、身の丈に合った対策を継続し、安全な業務運営を行っていきます。
7.本方針の位置付け
本DX推進方針は、当社の経営課題および将来の事業継続を踏まえ、経営者の意思決定に基づいて策定したものです。
代表取締役からのメッセージ
当社は、受注形態の多様化や取引先の増加により業務が複雑化するなか、経営者である私自身が主体となってDXに取り組んでいます。
デジタル技術は、私たちのような中小企業にこそ力を発揮します。受注・在庫・出荷データを蓄積・分析し、AIを活用した判断支援の仕組みを自社で構築することで、「誰がやっても同じ結果が出る経営基盤」を作ることが、会社を長く続けるための変革であると確信しています。
本DX推進方針は、私の意思決定に基づいて策定したものです。引き続き、経営者として先頭に立ってDXを推進してまいります。
河内物産株式会社
代表取締役 井上 芳子


