【プロジェクト完結】受注から追跡まで“完全自動化”を構築

DX・業務改善

【導入】 “点”の自動化から、“線”の自動化へ

今年の2月に「手作業でのCSV変換やめました」という記事を書きました。当時はまだ、メールで届くデータを変換するだけの「点」の自動化でした。

それから半年。私たちは、「受注受信から配送完了の追跡」までのプロセスを一本の線でつなぐ統合自動化システムの開発を進めてきました。 そして今月(9月)、ついに本格稼働を開始しましたので、その全貌を共有します。

【課題】 時間以上より重かった「業務の分断」

このシステム導入前、担当者はある取引先の出荷業務において、以下のルーチンワークをこなしていました。

  1. 受注処理: 毎日届くCSVデータの形式変換
  2. 出荷通知: 送り状番号の確認とメール送信
  3. 配送追跡: 到着確認と台帳更新

手慣れたスタッフであれば、これら全ての作業を1日トータル45分程度で完了できます。「たった45分」と思われるかもしれません。 しかし、現場にとって一番の負担は、時間数ではなく「業務の分断(スイッチコスト)」でした。

  • メールの着信 → 手を止めてCSV整形
  • 出荷直後 → 送り状番号で検索 → メール送信
  • 「この荷物、どこ?」 → 過去の履歴を探す

この一連の「割り込み」が、実は業務効率を落としていました。

【解決策】 「完全自動化」と「コックピット化」

今回構築したのは、(GAS) をベースにした3つの連携システムです。 あえて複雑な外部サーバーや有料ツールは使わず、Google の標準機能だけをフル活用することで、「コストゼロ」かつ「メンテナンスフリー」な堅牢なシステムを目指しました。

  • System 1:発注データ変換(メール検知→CSV自動整形→ログ保存)
  • System 2:出荷処理&発送通知(出荷完了→発送通知メール自動送信→ログ保存)
  • System 3:配送追跡 & ステータス管理(Web巡回→自動反映)

特にこだわったのが、System 3による**「社内管理コックピット」**です。

この画面は、1日3回(9:00 / 13:00 / 18:00)、システムが自動で運送会社のサイトをパトロールし、「配達店に到着」「配達中」「配達完了」といった状況を書き換えてくれます。 「最終更新日時」が秒単位で記録されるため、この画面を眺め、「エラーが出ていないか」を確認するだけ。すべての荷物がどこにいるか一目でわかり異常があればすぐに気づける体制が整いました。「手を動かす仕事」から「監視する仕事」へ。

【★】 お客様にも「同じ景色」を見せる情報ポータル

さらに、今回は社内の効率化だけに留まりません。 「社内で見ているデータが正確なら、それをお客様にも共有してしまおう」と考え、お客様専用の「出荷情報ポータル」を公開しました。

お客様専用のダッシュボード。「稼働中」のステータスが安心感を生みます。

このポータル画面では、以下の情報がリアルタイムで共有されます。

  • リアルタイム出荷状況: 今月の出荷件数やシステムの稼働状況が一目で分かります。
  • 自動更新の明示: 「配送情報はAM9:00、13:00、18:00に更新されます」と明記することで、お客様は「いつ見ればいいか」が分かります。
  • 出荷履歴 配送情報: 下部のタブから、過去の出荷データも自由に閲覧可能です。

これまでは「あの荷物、いつ着きますか?」という問い合わせがありましたが、このポータル公開後は「ここを見れば分かる」という安心感が生まれ、問い合わせはほぼゼロになりました。 「聞かれる前に見せる」という情報の透明性が、顧客体験を変えました。

【成果】 「作業」から「監視」へ

システム導入により、状況は一変しました。

  • 拘束時間: 45分/日 → 10分/日(朝夕のチェックのみ)
  • 削減率: 約78%
  • 精神的負担: ほぼゼロ

1日30分強の短縮ですが、年間で見れば約200時間もの余力が生まれます。 何より、「単純作業に思考を中断されない」という環境が整ったことで、担当者はよりクリエイティブな本来の業務に集中できるようになりました。

【展望】 「ラストワンマイル」は、AIに託す

Web上のデータ連携は、このシステムで完成しました。 しかし、まだ「運送会社の専用ソフトへの取り込みボタンを押す」という物理的なクリック作業が残っています。

正直、PyAutoGUIなどで自動化はできます。
夜間にバッチ処理すれば、すべて無人にできます。

しかし、私たちはそれを採用しませんでした。

  1. 「速さ」へのこだわり: 夜間にまとめて処理すれば自動化は簡単です。しかし、お客様は「発送通知」を今か今かと待っています。夕方の出荷直後に通知を送るのと、翌朝に送るのでは、顧客体験(CX)に天と地ほどの差があります。私たちは「出荷即通知」にこだわりたいのです。
  2. 「無人運転」のリスク: 画像認識型の自動化は、予期せぬポップアップ一つで停止します。誰もいない夜中にエラーで止まり、翌朝「送れていませんでした」となるリスクは、物流業務として許容できません。

「不安定な自動化より、確実な手動。あるいは、状況判断できるAI」

単純な座標クリックではなく、
画面を理解し、判断できる“エージェントAI”の時代まで、
「最後の1クリック」は人が押す
と決めました。

次に目指すのは——人間は例外処理と方針決定のみ
AIが単純作業をすべて代行する未来です。

「ハイブリッドAI自動化計画」は、進化とともに柔軟に形を変え続けます。

この記事が、皆さんの会社の業務改善のヒントになれば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました!