こんにちは! DX推進チームです。
私たちの会社では、本社と倉庫は物理的に離れた場所にあります。
しかし、セキュリティを確保した仕組みで結ばれており、一つのオフィスとして機能しています。
この環境を舞台に、長年当たり前のように続いてきた、ちょっと面倒な「FAXリレー作業」を既存のサービスを利用し撲滅した業務改善事例をご紹介します。
## 【改善前の流れ】一枚のFAXをめぐる、ちょっと面倒なリレー
別倉庫から発送する特定の商品について、お客様からの注文FAXは、まず本社に届きます。そこからが出荷指示のリレースタートです。
- 本社:FAXを受信 📥 本社の担当者が複合機でFAXを受け取ります。
- 本社:内容を確認し、倉庫へ転送 📠 担当者はそのFAXが倉庫からの出荷対象であることを確認し、今度は倉庫の複合機へ手動でFAXを送り直します。これが倉庫への出荷指示になります。
- 倉庫:FAXを受信し、出荷準備 🚚 倉庫の担当者がFAXを受け取り、ようやく商品の出荷準備に取り掛かります。
一見すると単純な作業ですが、ここには多くの「見えないコスト」が潜んでいました。
- 完全な二度手間:本社はただFAXを右から左へ流すためだけに、時間と手間(そして紙!)を使っていました。
- タイムラグの発生:本社の担当者が他の業務で忙しいと、倉庫への転送が遅れ、出荷準備が遅れる原因になっていました。
- 担当者の心理的負担:「あのFAX、もう倉庫に送ったっけ…?」と、常に気にかけておく必要がありました。
## なぜ、私たちは”自作”を選んだのか? (Build vs. Buyの選択)
「FAX業務を自動化したい」と考えたとき、私たちの最初のステップはコードを書き始めることではありませんでした。まずは、世の中にある様々なOCRサービスや業務自動化ツールを調査・比較することから始めました。
すぐに導入できる便利なサービスは、確かにたくさんありました。しかし、私たちはそれらのサービスと「自社で開発する」という選択肢を、費用対効果の観点から慎重に天秤にかけたのです。
### 既存サービスを利用する場合 (Buy)
- メリット 👍:
- 導入が早い: 契約すればすぐに利用を開始できる。
- 高性能・高機能: 専門企業が開発しているため、OCRの読み取り精度や管理機能が高い。
- サポートが充実: 困ったときに問い合わせができる安心感がある。
- デメリット 👎:
- 継続的なコスト: 月額数万円の基本料金や、FAX1枚あたり10円〜30円程度の従量課金が発生する。これが「ランニングコスト」として将来にわたってかかり続ける。
### 自社で開発する場合 (Build)
- メリット 👍:
- 圧倒的な低コスト: 一度開発してしまえば、ランニングコストはほぼゼロに近い。
- 自由なカスタマイズ: 将来的に別のキーワードを追加したり、通知先を変更したりと、自分たちの手で自由に拡張できる。
- 技術ノウハウの蓄積: 開発を通じて、社内に実践的な知識という貴重な資産がたまる。
- デメリット 👎:
- 初期開発コスト: 完成するまでのエンジニアの時間と労力が必要。
- 自社でのメンテナンス: システムに問題が起きた場合、自分たちで解決する必要がある。
## 私たちの下した決断と、リアルな費用
比較検討の結果、私たちは「自社開発(Build)」の道を選びました。
決め手はランニングコストです。既存サービスで処理すると、安くても月額数万円以上はかかります。
一方、私たちが自作したシステムで唯一コストがかかるのは、画像ベースのFAXを読み取る際の「Vision API」の利用料です。
今回の仕組みは、特別な専用機器や大規模投資を必要とせず、既存のサービスを活用して構築しました。
当社の利用枚数月間1000枚以下ではランニングコストはほぼ0円に近く、ほとんど費用をかけずに導入することができました。
それでいて、業務全体の効率化や社員の負担軽減といった成果はすぐに現れ、費用対効果の面でも非常に大きな改善となっています。
こうして、私たちの「FAX自動化の内製プロジェクト」が、満を持してスタートしたのです。
## スクリプトの裏側:賢い司令塔の仕事術
さて、ここからは私たちの「FAXリレー」をなくしてくれた、賢い司令塔(スクリプト)が、裏側でどんな仕事をしているのかを少し詳しくご紹介します。
### 1. フォルダの見張り番
スクリプトが起動すると、受信したFAXがPDF化されて保存される指定フォルダを24時間体制で監視し始めます。
### 2. 内容の解読者
新しいPDFファイルが見つかると、次はその中身を読み取る解読者の出番です。テキスト情報が含まれていない画像ベースのFAXの場合はOCRの出番。Vision APIやTesseractといった強力なエンジンが、画像に書かれた文字を人間のように読み取って、テキストデータに変換します。
### 3. 意思決定者
テキスト化されたFAXの内容を受け取ると、次はこのFAXを倉庫に送るべきか判断する意思決定者が働きます。あらかじめ設定した「キーワード」を探し出し、倉庫へ送るべきFAXかどうかを判断します。
### 4. 印刷命令を出す実行部隊
キーワードが見つかると、いよいよ実行部隊が動きます。 スクリプトから見ると、遠く離れた倉庫のプリンターがまるで同じオフィスにあるかのように認識できます。これにより、本社から倉庫のプリンターへ、安全に直接印刷データを送ることができるのです。
### 5. 報告と整理係
最後に、印刷が完了したことやエラー発生をリアルタイムで担当者に通知し、処理が終わったPDFファイルは別の「処理済みフォルダ」へきちんと移動させます。
この記事が、皆さんの会社の業務改善のヒントになれば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました!